物流業界では様々な業務が機能しており、それぞれ必要なスキルや知識が違います。
業務の種類や担当する役割によって必要な資格も変わってきますが、どのポジションでも効率化や課題解決に向けた専門知識は必要となるため、資格保持者は物流業界全体で価値の高い存在となるのです。

そこで今回は、物流業界で資格取得をする重要性やメリット、目指せる職業、取得手順などを詳しく解説します。また、資格取得のポイントやキャリアアップについても解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。

物流業界で働くうえでの資格取得の重要性

物流業界の仕事は運搬や配送のみならず、品質管理や保管、情報管理など多岐にわたります。その中で、企業は複雑な各工程の効率化を目指しているため、即戦力となる資格保有者は重要な役割を担う存在となるのです。

また物流業界において、資格は国内外の法律や規制、物流システムに関する専門的な知識を証明するものです。
物流業界のグローバル化が発展する中、必要スキルを備えておくことで、さらなるキャリアアップや企業成長への貢献なども可能にします。

物流業界で資格取得をするメリット

ここでは、物流業界で資格を取得しておくメリットと具体例について詳しく解説します。

キャリアアップにつながる

資格は一定のスキルを保持している証明となるため、専門的な知識が必要なポジションへのキャリアアップや大きな仕事を任せられるきっかけになります。

例えば、トラックドライバーが「運行管理者」の資格を取得することで、ドライバー管理へのキャリアアップを可能にします。運行管理者は、法律によって運送会社への配置が定められており、実務経験のあるドライバーに適任といえる仕事です。
また、自身の経験を活かした効率的な運行管理や課題改善を行うことで、所長や支店長などさらなる昇進も叶います。

信頼を得られる

資格を持っていることで、物流の知識や技術が高いことが認められ、信頼性や信用性が高まります。
また、問題発生時の対応も迅速かつ適切に行えるようになるため、社内や顧客、取引先から信頼を得られるでしょう。

例えば、フォークリフト運転技能者や倉庫管理主任者など、業務をするうえで必須となる資格が存在します。企業は資格保持者を雇い経営を行うことで、周囲に対して安全性や信頼性、知識の有無をアピールできるようになるのです。

転職に有利に働く

保有資格は、自身の強みや価値のアピールになります。転職時には、他の応募者との差別化や必要能力の証明を可能にするため、再就職で有利に働きます。
また、企業によっては資格手当がつくところもあります。「元の職場より給料をあげたい」「業務の幅を広げたい」などの目標を掲げている際も保有資格は有利に働くのです。

例えば、求人の必須条件として、資格の有無を記載している企業があります。この場合、条件に合うスキル保持者をピンポイントで募集しているため、採用される可能性が高くなるのです。
また、資格取得に対する支援制度を備えた企業も存在します。入社後に資格を取得することで業務の幅が広がったり、資格手当による増給などが叶ったりするでしょう。

物流業界の資格の種類

多様なプロセスにより機能している物流業界は、各工程で専門知識やスキルが重宝されます。ここでは、物流業界における代表的な資格の特徴について、それぞれ詳しく解説します。

物流技術管理士

物流技術管理士は、物流システムの設計や運用、改善などの技術的な知識と能力を証明する資格です。業務では、在庫管理や配送計画、物流コスト削減などの提案・実行をします。
資格を取得するためには、「物流技術管理士資格認定講座」を受講したうえで、試験に合格する必要があります。講座では、管理業務や現場改善などの知識を習得できるため、物流課題の改善に貢献したい方におすすめの資格です。

国際物流管理士

国際物流管理士は、国際貿易における物流の仕組みやルールを理解し、グローバルサプライチェーンの管理や課題改善などに取り組める資格です。

取得を目指す際は、国際物流業務に携わった経験を経たうえで、講義を受講し最終テストに合格しなければなりません。講義では、座学のほかに実践的な演習やケーススタディも行われるため、同じ志をもった仲間から情報収集を行えたり、新たなノウハウを蓄積できたりします。

国際物流管理士は、海外との取引や国際物流効率化への貢献を可能にする資格です。世界で活躍できるようになるため、海外駐在員や広い視野での物流課題解決を目指している方におすすめです。

参照:日本ロジスティクスシステム協会「第45期_国際物流管理士資格認定講座パンフ 」

倉庫管理主任者

倉庫管理主任者は、倉庫の効率的な管理や指導の実施ができる人材を認定する資格です。主な業務内容は、倉庫内の事故防止や適切な運営、従業員の研修などで、国土交通省によって作業マニュアルが定められています。

倉庫管理主任者になるためには、「倉庫管理業務の実務経験が3年以上あること」「指導・監督の実務経験が2年以上あること」「倉庫管理主任者講習会を受講していること」のどれかの条件を満たさなければいけません。
認定試験などはなく、上記の条件を満たしていれば資格を取得することができます。そのため、培った知識や経験を物流業界で役立てたい方におすすめの資格です。

参照:一般社団法人「倉庫管理主任者講習について 」

物流業界の資格取得の手順

資格により取得までの流れや必須条件、試験内容などは異なります。ここでは、先ほどご紹介した「物流技術管理士」の取得の流れを解説します。

①資格認定講座を受講
まずは、指定の資格認定講座を受講する必要があります。
受講する前には、「物流実務経験が2年程ある」「物流技術管理士補を保有している」のどちらかの条件を満たしているか確認しましょう。

②講座の修了試験を受ける
21日間にわたる全13単元の資格認定講座を修了したのち、修了試験を受けます。
テストは、客観テスト・論文テスト・面接テストの3つで構成され、全てのテストで60%以上の点数を取ることが合格条件となります。
この際、講座を6日以上欠席した方は受験資格がなくなるため、出席日数に気を付けておきましょう。

④物流技術管理士として認定
修了テストで合格点を出すと、物流技術管理士として認定されます。

物流技術管理士は上記の手順で行われますが、資格によって試験が不要だったり、合宿の参加が必須条件だったりと合格基準は様々です。事前に受験資格や試験内容を確認し、対策や勉強計画を立てるようにしましょう。

物流業界の資格取得のポイント

一概に物流業界の資格といっても、資格内容や専門とする業務、難易度はさまざまです。ここでは、取得した資格を役立てるために、抑えておくべきポイントをご紹介します。

・自分の担当している業務に沿った資格を取得する
・将来像を見据えて資格を取得する

自分の担当している業務に沿った資格を取得する

知識を専門分野で役立てるために、担当している業務に合わせて取得を目指すことは大切です。

例えば、運送業や倉庫業では、荷物の積み込みや運搬に関する「フォークリフト運転技能者」や「危険物取扱者」の資格が求められます。
一方で、物流コンサルタントや物流システムの設計・開発に携わる場合は、物流の基礎知識や分析力を備える「物流マネジメント検定」や「物流システム技術者」の資格が有効です。このように、業務ごとに必要な資格は異なるため、取得前に現在の業務で必要な資格を把握しておくとよいです。

将来像を見据えて資格を取得する

自身の目指すキャリアパスに近づくような資格や、将来に役立てる資格を取得しておくことも大切です。
例えば、将来的に海外で働きたい場合はグローバルに活躍できる「国際物流管理士」、管理やマネジメントに興味がある場合は「ロジスティクス管理」などの取得がおすすめです。

このように、資格ごとに目指せる職種や身に付く知識は異なります。資格は保有スキルの証明にもなるため、事前に取得しておくことで就きたい職種への転職や、キャリアアップなどで役立てられるのです。

資格取得で目指せるキャリアアップ

資格を取得することで、現在の職種から管理職やマネージャーへのキャリアアップを図ることができます。
ここでは、物流業界で資格取得をした際のキャリアアップ事例を2つ解説します。

物流事務の場合

物流事務でおすすめの資格としては、財務状況の把握スキルが身に付く「簿記」です。
一般的な業務では書類や伝票作成、商品の受発注などを行いますが、簿記を取得することで経理全般を任されるようになります。
また、財政面から経営をサポートすることで、経営企画や役員へキャリアアップも可能となる有効な資格です。

倉庫スタッフの場合

倉庫スタッフの主な業務は、製品の仕分けや出荷準備、在庫整理などです。
業務を行う上で役立つ資格は多数ありますが、代表的なものとしては「フォークリフト運転技能者」があります。
フォークリフト運転技能者を取得することで、倉庫内で荷物を運ぶフォークリフトを操縦できるようになります。また、フォークリフト運転技能者は物流ニーズの増加により需要が高まっており、資格取得によって昇給なども期待できるメリットの大きい資格です。

このように資格取得をすることで、さまざまなキャリアアップの道が開けるようになります。資格は昇給や昇進のみならず、自信やモチベーションにもなる大切な資産です。
将来の幅を広げたり、今後の物流業界に貢献したりするためにも、資格取得に挑戦してみてくださいね。