女性のトラックドライバー、トラガール。
少し前までは、ドライバー業界は男社会という印象がありましたよね。
女性がトラックドライバーを職業として選ぶのはどのような理由でしょうか。
トラックのような大きい車が好きだからでしょうか?
運転が楽しいからでしょうか?
もちろん、それも大切な選択肢のひとつです。
しかし、最大の決め手は、[環境が良い]ことなのです。
今、“トラガール”と呼ばれる女性のトラックドライバーに注目が集まっている。国土交通省自動車局の担当者は語る。
「ドライバーの高齢化が進み、トラック業界における人材不足は深刻な状況です。人員構成を見ると、中高齢層の男性が圧倒的に多い。女性はわずか2.4%で、数にすると約2万人と他の職種に比べるとあまりにも少ない。
ただ、女性の大型免許取得者は全国で13万人以上います。この中には潜在的にドライバーになりたいと思っているかたはいるはずです。そうした女性に光を当ててドライバーを増やすべく、促進活動を進めています」
企業はもちろん、国土交通省も国の代表として、女性トラックドライバー・トラガールをバックアップしています。
注目を浴び、バックアップされるということは、それだけトラガールにスポットライトが当たっているということです。
国土交通省では、2020年までに女性トラックドライバー[トラガール]を4万人まで増やすことを目標としています。
女性が働きやすい職場環境作りに、今後もますます力が入る予定です。
しかし残念ながら、男女の比率をみてわかるように、トラック業界はまだまだ男社会です。
そのなかで働くトラガールを追いました。
「荷物の積み下ろしをしながら、1日、150~200kmくらい走ります。重いものだとひと箱20~25kgの荷物もあって、すべて下ろし終わると『やっと終わった!』と、ホッとします」(上原さん・以下「」内同)
定時は17時50分。そこで終わることもあれば、2~3時間残業することもある。
担当は主に県内輸送だが、時には他県へも遠征する。
もとは実家の農業を手伝っていたが、夫と離婚した10年前にトラック業界に飛び込んだ。
「トラクターなど農耕車の大型特殊免許と一緒に大型免許も取ったので、資格を生かせる仕事に就きたいと思ったんです。新潟は雪が多くて運転には危険というイメージがある。体力的にも女性に務まるのかと随分心配されましたが、『とりあえずやってみたい』と押し切りました」
今では、「大きい車に乗るのはかっこいい」と、息子たちも応援してくれている。
葛藤もあったのだが、そこは“一家の大黒柱”として迷いを捨てた。
「仕事中に子供が体調を崩すこともありましたが、そこは仕事なのできっちりと線引きをして。『仕事は仕事、母さんは稼ぐよ』と、息子にもいいきかせました。ウチは母子家庭なので、私が稼がないといけないですから」
どのタイプの仕事であっても、勤務時間や休暇、あるいは仕事に穴をあけられないという状況は同じですよね。
また、トラックドライバーは“一家の大黒柱”の仕事として成り立つ職業です。
「最近は女性が増え、『今日の夕飯は何作るの?』といった主婦の会話ができて楽しい。納品先などで男女共用のトイレを使う不便さなどはありますが、女性だからと納品先で気遣ってもらい、職場の仲間も言葉は乱暴だけど(笑い)、やさしい人ばかり。環境がいいので他の職場を考えたことはありません。できる限りここで働き続けたいです」
何らかの不便さというのは、大小はともかくとして、トラガールだけでなくどの会社にも付きものです。
そしてその不便さに目を瞑ってでも、トラガールであり続けたいという女性が増加しています。
理由はやはり、[環境の良さ]でしょう。
男女問わずきちんと評価される上、もともと男社会だったということもあり、女性に優しい職場です。
さらにいわゆる“一家の大黒柱”としてキャリアを積んでいくこともできますし、パートなどとして時間に融通を利かせることもできます。
一度トラガールを経験してしまえば、あの大きなトラックを動かす楽しさから離れがたい、という女性もいらっしゃいます。
そういった様々な観点から、トラックドライバーを選択する、あるいは選択し続ける女性が多いのです。
[トラガール]は、今後も国土交通省から支援され、少しづつではありますが、しっかりと拡大していくことでしょう。
またそれに伴い、女性がさらに働きやすい職種へと、より良い変貌を遂げていくでしょう。
参考引用 女性セブン2015年3月26日号