今月9日、安倍晋三首相がトラックドライバーとして働く千葉県市川市の山根理絵さん(42)ら運輸・建設関連で働く女性4人と首相官邸で面会するというイベントが行われました。皆さんご存知でしたか。

今回は、この面会が行われた背景ですとか、それがどういう意味を持っているのかという点から、この「トラックドライバーの仕事と女性」というテーマについて皆さんと、考えを深めていきたいと思います。

国のイチ首相が民間を招いてまで伝えたかったこと

さて安倍首相はどうしてこのイベントをするということを考えたのでしょうか。あまり安倍首相が民間の方を招いて面会するというイベントをすることは、そうそうありませんよね。

きっと何かこのイベントを通して、私たちに伝えたいメッセージがあるのだと思います。そのメッセージとは何なのでしょう。

それを紐解くためには、そもそも最近の安倍首相が何を考えているのかが分かると、なんとなくその輪郭が見えてくるかもしれません。

さて最近の安倍首相は、いま日本の経済を成長させるための大きな柱として「女性が輝く日本へ」と題して、働く女性の支援に取り組んでいるようです。

更なる女性の社会進出は、日本復興のカギ

今回の首相官邸において行われたこの面会は、結果的に現在は男性の多いトラックドライバーという仕事で、日々頑張って働いている女性たちにスポットライトが当たった形になりました。

働く女性を支援することで、日本の女性たちが働く上で、もっと働きやすく、もっと活躍できるような環境づくりに取り組んでいるというのが、今の安倍首相の考えなのでしょう。

これまでも男女間での仕事における平等に取り組んだ活動は多々ありましたが、それはあくまでも男女を平等にしようという考えがベースにあったように思います。

でも今回はそれだけではないようです。その理由を少し考えてみようと思います。

避けられない、人口減インパクト

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まずひとつ目のポイントは日本の人口が減ってきているために、そもそも働く人が減ってきているという現状があります。

厚生労働省の調べによれば日本の人口は2004年を境に減ってきており、それに伴って、働く人がだんだんとこれから減っていくことが予想されています。

加えて日本の労働人口(15~64歳の人口)は1990年代をピークに減少していて2050年にはピーク時の半分位しか働く人がいなくなってしまう計算になっています。

これではこれからの日本では、全国どこにいっても働く人が足りなくなってしまい、どこへ行っても人手不足で、仕事がうまく進まなくなってしまうという現状が発生しそうです。

アメリカの有名な新聞であるロサンゼルス・タイムス紙によると、今の日本の状態で、女性の働いている人の割合を男性と同じ程度まで引き上げることができれば800万人分の労働力が増加する可能性があるそうです。

収入増⇒消費増⇒経済効果

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これが実現できれば各家庭の収入が増え、消費もまた増えてくるので、経済も上向きになることは言うまでもありません。

この予測もあって、日本は女性に仕事をする機会を提供する方向で様々な取組をしてきました。その甲斐があってか現在ではどの業界でも女性が活躍し始めていますね。

なかなか進まない、運輸業界の女性進出

一方、運輸関連の仕事では、女性の進出が思うように進んでいません。これは、この仕事が他の産業に比べて労働時間が長かったり、肉体労働等の負担が多かったりと、女性にとって働きづらい環境であることが原因なのかもしれません。

そこで安倍首相はこの度、トラックドライバーとして働く女性を始め、建設業や運輸業で働く人を首相官邸に招き、より女性がこの仕事に興味を持ってもらい、これからよりたくさんの女性がこの業界で活躍してほしいという願いを込めて今回の面会が実現したのです。

これに合わせて、働く環境づくりや法律の整備など様々な取組が今後なされてくると思われます。

女性免許取得者で実際にドライバーはわずか6%

ちなみに警視庁によると現在、日本全国で大型免許を持っている女性は13万4344人いるのですが、実際にドライバーとして活躍しているのは8160人だけだそうです。

免許取得をする人は多いのに、ドライバーとして働く人が少ないということで、政府関係者も「なにか大きなハードルがあるのだろう」と現場をまわり、直接ドライバーの声を集めている最中だとのこと。

実際に何度か大規模なヒアリングが行われたとのことなので、簡単に結果をまとめてみます。

問題は重い荷物の積み下ろし

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まず当初は「都市部より地方の方が免許取得率は高い」というデータから地方の方にドライバーが多いという予想だったとのことなのですが、実際は地域性というよりも「手で積み下ろしなのかフォークリフトなのか」といった運び方で分布が分かれていたとのことでした。

やはり重い荷物を積み下ろしする際に、手作業というのは女性にとっては(男性にとっても)大変な作業ですよね。

後は荷物の種類によっても分布が分かれていたという結果がありました。例えば、食品を運ぶという仕事では女性が多く、配送先のスーパーや小売店に女性スタッフが多いことから、受け入れられやすい、という傾向もあったようです。

親や家族のサポートが必須

また子育てをしながら働く女性、特にシングルマザーの声の中には「中距離以上になると会社や回りの人の手助けが必須」ですとか「子供は両親に預けている」というようにまわりのサポートがあってはじめて成り立つ仕事という面が多く見受けられたとのこと。

また確かに力仕事に長けた男性が活躍する職場ではありながら、逆に「女性の方が丁寧な運転ができるのではないか」とか「細やかな気遣いができてコミュニケーションがうまく取れる」等の励ましの声も多く、これからの活躍が期待されているようです

全国津々浦々、様々な環境で働かれている一人一人の女性には、それぞれの悩みや苦労があることだと思います。安倍首相をはじめとする政府の方々には、現場で実際に起こっていることをしっかり把握して頂き、より働きやすい仕事の実現や、それに伴う、より多くの女性の活躍を願ってやみません。

イメージ戦略の効果は未知数

最後になりますが、ネーミングとしてフラガール等の影響でしょうか、政府はトラックドライバーで働く女性を「トラガール」、土木系で働く女性を「ドボジョ」とネーミングしてこれから女性の進出を後押ししていくとのこと。

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実はこのネーミングについては、ネット上では微妙な反応もあり「トラガールって阪神ファンのことだと思ってた」とか「まとめて作業着系女子とかのほうがよくね」とか色々と面白コメントが続出していますが、ほどなく現場の女性の活躍を最大限に表現するようなかわいいネーミングが出てくることでしょう。

【参照URL】
「トラガール」活躍応援 自動車局総務課・神澤専門官「地道な取り組み必要」

女性活用で経済成長 安倍政権の理想と現実のギャップ【争点:アベノミクス】

女性が輝く日本へ【首相官邸】

「日本の人口の推移」